金曜日のお昼に遊ぶ人なんてあんまりいない。だから大体仕込みの日と決めてやれオイル漬けだったり、ナンをゆっくり焼いていたりする。昨日もゆっくりした気持ちで時間を過ごしていると二人の女性が来店。
二人は親子で、お母さまの方が店内を見ながら話し出した。
「私は74歳でね、明治生まれの両親に育てられたの。専業主婦で、主人が定年で家にいるようになると、家や庭は主人の好み。私の出る幕ないの。こんな風な室内って素敵ね。子育てが終わられてから、始められたの?」
「いえ、子育てするの忘れて、店を育てるのに専念してました。」
「人それぞれの人生があるのね。」
「そうですね。時々もうやめようかなんて思ったりすることもあるんですけど、お客様みたいな方が喜んでこの空間を楽しんでくださってたりするのを見るとそれが励みになって、また頑張ろうって気持ちになるんですよ。」
「私もなんだか今日は胸がいっぱい。田舎で育った私にはここの空気がたまらないの。」
お客様をもてなして、いかにこのなんてない空間で喜んでいただけるかが私の本随。
今日は、この女性との会話でうっすら涙が浮かぶような快感を感じた。
店をやっていくってなんだろう。私はいつまでも少しだけでも心通わせられる会話ができることを大切にする場所を作っていきたいと思った。